現在の日本の五つの異次元な国情
その① 異次元の金融緩和
2016.12.30
異次元の金融緩和と呼ばれたアベノミクス。異次元の意味が「尋常ではない」ということならば、異次元は他にいろいろあるかも?と考えてみました。異次元な事柄は様々あると思いますが、思いつく五つの異次元について感想を綴ります。まずは異次元の発祥地、金融緩和について。
まずは先頭打者の金融緩和。日銀のマネタリーベースは既に対GDP比8割超に突入しています。先進各国はおおよそ2割。付加価値を生むことなく、国債を日銀が買う手法で湯水のように市場にお金が投入されています。2012年に民主党から自民党へ政権が代わって以降、マネタリーベースは急激な上昇を続けて現在も上昇継続中です。金融緩和策と聞くと通常はバーゲンセールにように期間限定のイメージがありますが、今回の緩和策はいつまで続くのか分からない様相です。低金利で企業投資を呼び、資金を市場に大量投入してインフレ傾向を持たせ売上と給料を上げ、最終的に消費を喚起するという理屈は分かり良いですが、しかし結果は十分に出ているでしょうか。とくに消費はなかなか伸びずむしろ減っています。給料が上がらず将来不安も消えないならば無理もないことです。
いつまでも破格な安売りは続けられないのと同じく、必ずいつかは終点を見出さなければなりません。無期限で金融緩和を実施し続けても問題はないという考えにはなかなかなれないのではないかと思うのですが、現在日銀は特段に期間を限定せず、2%のインフレが達成されるまで緩和を続行する意向の様子であるので、本質的に考えれば2%インフレ達成のための方法を改めて考え直してみたほうが健全なのではないかと思えます。金融緩和しても物価は上がらないという話もあるようですから、緩和を続けてその先どうなるかはっきりと分からないけれどとにかく物価が2%上昇するまでお金を市場に出しまくるんだ!という今の方向性は、虫歯を治療せず薬で痛みをごまかして虫歯がさらに大きくなっていくような本末転倒の不安を感じるので、物価も給料も消費も上がらないような勝者のいない金融緩策ならば一刻も早く終了してもらいたいです。
2012年政権交代以降、日本の株価は上昇し、株を保有する国内外の人々にとっては恩恵があった様子です。しかしこれも経済全体から見れば部分的な効果に限られ、景気上昇の起爆剤になっているわけではありません。政策のテコ入れが最も必要な低所得の人々の大部分は、消費の足しになるに十分な株式を所有出来ない状況とも思います。持てる者と持たざる者との格差が広がるひとつの大きな要因でもあります。
格差が広がることで、1980年代まで日本の高度成長のシンボルだったいわゆる「中間層」も消滅しました。右肩上がりが望めない今後の日本に、再びこの中間層を復活させるという民進党の一部の見方にも、本当にそんなことが可能なのだろうかという不安の方が先立ってしまいます。10月には2018年までにインフレ2%達成が望めないことを日銀が観測したため、事実上黒田総裁の敗北宣言ではないかとも見られるなか、いつまで異次元の金融緩和を続けるつもりなのか、現政権の経済政策は厳しく問われなければならない局面に入っていると思います。
荻原隆宏