2018年3月17日 荻塾開催レポート

第9回荻塾は「リビングウェイジが必要な12の理由」と題しまして開催させて頂きました。

リビングウェイジは、イギリスのロンドンから始まった、実際に必要とされる生活費を計算根拠にした、各自治体が独自に決める最低賃金制度です。国の定める最低賃金では人間らしい暮らしが出来ないとのロンドン市民自らの発意からはじまり、議会と市長の決断によって2006年にロンドン市で条例化され、以降、英国全土、アメリカ全土に普及しました。

リビングウェイジ制度は自治体が独自に制定していることから、実に多様な制度形態が見られます。それぞれの都市、街に合った形で、リビングウェイジが算出され、制度化されています。

その重要なポイントは、1時間あたりの人間が働く価値を、政治が権利として保障するという点にあります。

最低賃金制度は、雇用者(企業)に対して、一定の賃金以上の額を労働者に支払う義務を定めますが、リビングウェイジは、労働者が人間らしく生活する権利を保障する制度であるという点が、最低賃金とは大きく異なります。

米国では、公共事業に従事する労働者の最低賃金を職種別にリビングウェイジとして自治体独自に設定し、公共事業を受注した企業にその支払いを義務化しているケースもあります。

日本はこれまで、消費税が上がり、社会保険料が上がり、物価が上がり、水道料金・電気料金など様々な生活コストが上がる傾向にあるなかで、お給料だけが実質下がり続けてきました。国税庁のデータでは、平成10年をピークに平成28年に至る間、日本人の平均給与は55万円も下がっています。

さらに、人口減がさらに深刻さをもたらしています。国民一人当たり国の借金返済の負担は増え続け、税も保険料もさらに上がっていくでしょう。しかも、受け取る給付額は減額されると予想されます。

今後も国内の生活コストが上がり、貯蓄も増えず、ますます老後不安が高まる社会となれば、もはや豊かな国とは言えません。

いま政治がするべきは、政府の財源を潤すことを図るよりも、国民の収入を増やすことをまず考えるべきです。リビングウェイジはその主軸政策として、英米から学ぶことは多大なのではないでしょうか。

荻原隆宏

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