2017年6月19日 荻塾開催レポート

日本国憲法第8章にある4つの地方自治の条項について、GHQ草案から政府原案が決定される過程で何が変わっていったかを調べました。

憲法改正と言うと9条改正に直結されがちですが、憲法全体を見渡して議論することが重要です。イデオロギー政争の火種にするのではなく、国民生活を豊かにする観点で憲法を論じたいと思うのです。

その意味で、地方自治の条項はしっかりと議論されるべきものです。
日本の地方自治はなかなか「住民自治」に基づかず、行政主体の「団体自治」に拘泥しがちです。そもそも、団体自治と住民自治の概念が分離しているところに、団体自治が住民自治よりアドバンテージを取る余地が生まれてしまっています。

憲法第94条の主語である「地方公共団体」は、GHQ草案や入江俊郎法制局次長(当時)作成の草案では、主語は「住民」でした。しかし政府原案が作成される過程において、この住民という主語は「地方公共団体」に変わっていきました。

また、第93条の「議事機関として議会を設置」の文章については、GHQ草案では「legislative assemblies」(立法議会)となっていましたが、閣議決定された政府原案の英訳では「assemblies as their deliberative organs」(審議機関としての議会)に変わっていきました。

第8章のすべての章の主語である「地方公共団体」とは、行政府と議会で共に権力主体を構成しますが、そこに文章上「住民」が関わるのは「選挙」のみです。選挙だけでは住民の意志は十分に反映仕切れないことは、もはや周知の通りと思います。
無論、GHQ草案がなんでも正しいという話ではありません。しかし、憲法策定過程で住民という主語が団体に変わり、立法議会が審議機関に変わっていったのは、事実です。
日本の未来は地方を豊かにすることで初めて拓けると私は思っています。
自治に関する憲法条項の議論の深まりとともに、日本の住民主体の自治が広くもたらされるよう願っています。

荻原隆宏

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