2017年4月10日 荻塾開催レポート

米英に比べ賃金が低い日本に、リビングウェイジ制度を導入してはどうか、というテーマで開催しました。

欧米で導入が進むリビングウェイジ(Living Wage:生活賃金)制度。 最低賃金(Minimum Wage)では人間らしく暮らせないと、主に英国・米国の都市部各地で浸透を始めています。2017年2月現在の日本の最低賃金は714円(沖縄・宮崎)~932円(東京)。 月収(一日8時間×22日間)12万5,664円~16万4,032円で、果たして人間らしく暮らせる収入と言えるかどうか。

エコノミストの2017年レポートによると、東京はニューヨークよりも1割ほど生活コストが高くなっていますが、ニューヨーク市の最低賃金は現在9ドル(1,008円※1ドル=112円)、さらにリビングウェイジが13,65ドル=1,529円(医療補助なしの場合)11.9ドル=1,333円(医療補助ありの場合)。ニューヨーク州は2018年には最低賃金15ドルが実現する流れにもあるようです。実現すれば、州内のすべてのサービス業は15ドル(1,680円)を従業員に支払うことになります。東京では生活コストがニューヨークより高いのに、ニューヨークの6割程度しか賃金がもらえないのは一体なぜでしょうか?

生活賃金見直しの動きは英国でも急速に展開しています。先進国のなかでも過酷な賃金状況におかれている日本の従業員。日本は、もっと労働者を大切にするべきです。企業は従業員の賃金を上げ、行政は住宅や保育・教育のコストを下げるよう視点を大きく転換する必要があります。労働者や住民にしっかり生活資金がまわれば、自然と消費拡大して腰の強い経済が生まれます。

上昇志向がもてはやされる社会では、成功者だけに資金がまわり、社会全体で幅広い消費マーケットを共有することが出来ません。資金を一部の企業や経営者がコントロールするシュリンクした社会であってはなりません。国民全員が豊かに人間らしく暮らせる社会を作る。これが成熟した社会の姿であり、日本が目指すゴールであるべきです。

借金は増え、賃金が減っていく今の日本。国民にとって実に悲惨な状況と言うべきです。
まずは、従業員の賃金を上げ、裾野の広い消費マーケットを構築することが、日本経済に欠かせない決断だと思います。

荻原隆宏

一覧に戻る